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石巻の若者 世界を見た

オーシャンドリーム号石巻に入港した客船では過去最大の大きさ

 7月18日に横浜港を出航したチャーター船オーシャンドリーム号が10月9日、石巻港に入港した。このクルーズ「地球一周の船旅」は国際NGOピースボートがコーディネートし、1983年の第1回から30年間で、延べ4万人以上が参加。180以上の港に寄港した。
 今回の第80回クルーズは横浜を出航し、85日かけ、ベトナム、シンガポール、パナマ他20の国と地域に寄港した。地球を西回りに一周した後、最終寄港地である石巻に到着した。寄港地では、地元住民との交流や、過去に現地で起こった戦争や内戦を知ること、観光など多くのプログラムが用意されており、航行中の船内ではフリースクールや英会話教室などが設けられ、バーやジャグジー、トレーニングルームなど娯楽施設も充実している。
 東日本大震災の記憶風化が進む中、世界各地の人たちに震災の経験、教訓を伝え語り継ぎ、互いに学ぶことを目的に、石巻からは2名のユースアンバサダー(青年大使)が乗船した。
 青年大使の一人でいしのまき市民劇団「夢まき座」に所属し舞台の脚本などを担当した高橋さやかさんは、勤めていた会社を辞め参加した。偶然出会った女性から、シンガーソングライターのさだまさしさんが震災後の石巻について書いた小説を紹介されて、「何かのカタチで船の上で発表するために私のもとに来たのだ」と思ったそうだ。すぐにその小説を朗読劇の脚本にまとめた。参加者も「今、船内で上演することに意味がある」と賛同し、発表を実現させた。
  この演劇でみんなが石巻に興味を持ってくれたこと、涙を流してくれたこと、小説を貸してくれた女性が「この本で2回感動することができました」と言ってくれたこと、ワークショップに参加した子どもが役者を目指すと言ってくれたこと、声が小さかった人がちゃんと声を出せるようになったこと。高橋さんは「85日でこんなに人って変われるものだと感動しました。今回の旅は可能性にあふれた旅、他のジャンルの人と関わることによって自分の新たな可能性を見出せた」と語った。
 「再確認の旅」と振り返るもう1人の参加者は、女川町出身で在住のデザイナー崎村周平さん。現在、Graffiti Writer D-BONSとして女川を始め東北、東京等でも活動中。船内活動では参加者と大漁旗を制作。石巻寄港時、崎村さん自身が女川町の現地ガイドを務めた。船旅を共にし、被災地の現状や震災時の話に耳を傾けてくれた仲間に実際に見てもらえたことが青年大使として一番充実した取り組みになった。「子どもたちに自分の姿をみせることで、好きなことを女川でもできると証明したいです。復興に関しても、何か新しいことをはじめたりつくったりすることだけではなく、人の思いをつなげていくことで果たせるものがあります」。女川が今、進もうとしている方向は間違いではないと語ってくれた。
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 注:国際NGOピースボートは、1983年に日本で設立。東日本大震災緊急支援などの災害支援活動のほか、地雷根絶キャンペーンなど、世界各国で活動は多岐にわたる。2002年には国連の特別協議資格を取得した。

取材・文・写真:千葉 拓人(東松島高校3年生)