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心の栄養「夢まき座」

旗揚公演まであと7日!こんなふうに励まし合った

 いしのまき市民劇団「夢まき座」が今年11月に旗揚げ公演を開くと聞き、練習から本番まで団員の思いや取り組みを取材した。
 「夢まき座」は、演劇が好きだ!という職業も年齢もさまざまな人たちが、生き生きと活動している元気集団だ。結成に向けて、平成23年3月11日に団名を決定するはずだった。「地域のみなさんと一緒にに息の長い劇団をめざして」という思いから、市民に名前を公募して、いよいよ船出という時震災が起きた。団員1名が犠牲になった。
 先延ばしとなった活動は2か月後の5月に開始。名前は「夢まき座」に決まった。大人が夢を語っていく、まわりを巻き込んで楽しむぞ、という気持ちが込められている。その夏、まだ公共施設の多くが避難所であった時期、市内の旧家を借りてミニ講演を開いた。
 そして今年、いよいよ旗揚げ公演を迎えた。演目は「石の親族」(作:ハウフ)。舞台は約150年前の南ドイツ。生活が苦しくお金に困っていたきこりの少年は、大金を手に入れるため、悪魔にそそのかされ自分の心臓と引き換えに詰めたい石の心臓を手に入れてしまう。心がこわれた少年を見守る人たちの応援で人間としての温かさを取り戻すという姿を通じ、本当の幸せとは何かを問いかけた。
 「なぜこのお話に決めたのですか?」と団長の宮城利史子さんに聞いた。
 「身近な人との関わりと助け合いの気持ちがどれほど大事か、震災を経験して改めて感じた。その気持を、観に来てくださったみなさんと分かち合いたい」
 公演は絵本から抜け出てきたいようなすばらしい世界だった。団員のみなさんは同じことを言っていた。「伝えたいから自分の役になりきって表現する」「好きだからこそ、その気持がどんどん高まっていく」15名という少ない人数の中、みんなが力を合わせて準備した。全部手作りである。助け合いながら舞台が完成していくことに感動した。
 観客からは、笑顔と涙の温かい拍手がたくさん送られた。「夢まき座」は、市民の「心の栄養」になっていく。これから歴史を作っていくのだ!

取材・文:松林 拓希(蛇田小学校5年生)