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かんなぎ

岩手県雫石町。手作りアイスクリームの店「松ぼっくり」裏手の林にて
岩手県雫石町。手作りアイスクリームの店「松ぼっくり」裏手の林にて

2011年3月11日、あの日から11年が過ぎた。雄勝町はこの日を境に大きく変わってしまった。私は生まれてから7年しか震災前の雄勝町を知らない。
短い年月だったが、唯一鮮明に覚えていることがある。毎年地元で行われていたお神楽だ。今でもふと太鼓や笛のメロディーが頭の中で流れてくる。雄勝町には600年以上前から神楽の伝統がある。大浜の千葉家、雄勝浜の小田家、大須浜の阿部家、それぞれの一人の子どもだけに教え伝えられた。
小学生のときに学校でお神楽をみんなでやる授業があり、私はその時間がとても好きだった。何故だろう。あの空間やあの場の雰囲気には目に見えない「なにか」があった。兄も小学生のときに同じようにやっていたし、父は今も現役だ。お神楽を通して、父や兄に対する尊敬の念が自然に生まれていたからかもしれない。
小学校を卒業してから、自分がお神楽を舞うことはなくなったが、中学を卒業するまでは父の後ろをついて行き、舞台の裏側を見せてもらったり、準備を手伝ったりして、地元のお神楽に関わっていた。当時は意識していなかったが、今考えると、伝統を紡ぐ上で、とても貴重な体験をさせて貰えていたんだなと感じる。そして、その経験が今の自分を作り上げたんだ、と思う。

阿部 洋都
盛岡大学1年生

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