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ことわざは生きている

ことわざは生きている

山口 政信さん(日本ことわざ文化学会事務局長)にお聞きしました

私は2021年の「第12回エコとわざ」コンクールに応募し熊谷組賞を受賞した。このことをきっかけに、ことわざに興味をもったので、日本ことわざ文化学会事務局長の山口政信さん(明治大学名誉教授)にことわざについて取材した。

山口さんは大学で保健体育とことわざ学を教えていた。社会人に向けて笑いの講座も開いてきた。
「『ことわざとは定義することができない』ということわざがあったように思います。時田昌瑞さんの言葉を借りれば、17音(5・7・5)の俳句より短い、世界でもっとも短い言葉の芸術となります」。ことわざはひとことでは説明できない生き物だと山口さんは考えている。
ことわざは、最初の頃から変わることがある。使われなくなると消えてしまうこともある。「縁の下の力持ち」のように、ひとつのことわざがいい意味で使われる場合も、無駄という意味で使われる例もある。
山口さんは、子どもの頃から歯切れのよいリズミカルな言葉が好きだった。内容がバラエティにとんでいて、いろんなことが書いてあることがおもしろくて、ことわざに興味を持った。
体育を教えるときにも創作ことわざを役立てている。スキーの授業中に創った「コブはすべりたし、コブはつくりたくなし」を例にして学生さんにも創ってもらったそうだ。バレーボールのパスには「三角の中に丸がある」、卓球には「ボールと魚はすばやく切れ」などがある。
ことわざに特に決まりはないが、3つ大切なことがある。ひとつは、リズムがよく、話しやすく、覚えやすいこと。2つめは、短いこと。言葉の脂肪を取り除いて、言葉のエッセンスを残すのだ。3つめは、意味があること。「エコとわざ」の場合は「エコ」がテーマだ。簡潔で記憶しやすく、言い得て妙なものがよいそうだ。「ことわざ辞典にのっていないことわざもたくさんあります。ことわざは知っているだけでなく、普段の生活で使ってみることが大切です」と山口さん。好きなことわざは年ともにかわってきているそうだ。「75歳の今は、『禍福はあざなえる縄のごとし』が気に入っています」。いいことと悪いことは交代交代にやってくるという意味だ。
世界で一番古いと言われていることわざは、4000年前、シュメール人が残した「よい言葉はすべての人の友」や「火の消えないうちにあなたの宿題を書き上げなさい」などだそうだ。日本では1400年前、聖徳太子が言ったとされる「和を以て貴しと為す」が古いと言われている。みんなで仲良く話し合いをして決めましょう、ということだ。このことわざは今も使われている。1400年も生きてきたなんて、すごいことだ。
ことわざはなんのためにあるのだろう?生活を豊かに送るために欠かせないからだ。悩んだ時にことわざがヒントになることもある。
今、子どもたちに一番伝えたいことわざは、「好きこそものの上手なれ」だそう。「好きなことをとことん追求する、続けられることが幸せなのです。音楽でも、お料理でも、勉強でも、なんでもかまいません。『ヘタの横好き』ということわざがありますが、好きであれば下手であっても意味があるのです」と山口さんは教えてくれた。

第12回エコとわざコンクール(2021年) 熊谷組賞受賞

木を植えよう未来の空気を作るんだ
(酒井 朱理 石巻市立石巻小学校2年生)

第13回エコとわざコンクール 作品募集!

「エコとわざ」は「エコ」な「ことわざ」で環境、自然、未来を考えるためのことわざのこと。「エコとわざコンクール」は今年で13回目。小中学生に環境のことを考えてもらうために始まった。前回のテーマは「豊かで美しい地球を未来につなぐために、私たちに何ができるかな~2030年どんな地球にしたいかな~」だった。

今回のテーマは「美しい地球で暮らしていくために、私たちに何ができるか考えよう〜2050年どんな未来にしたいかな~」だ。小学1年生から中学3年生までが応募できる。応募期間は、2022年6月4日から9月10日(土)まで。環境大臣賞、エコファースト推進協議会優秀賞、日本ことわざ文化学会賞、加盟企業賞がある。熊谷組の青木智代さんは、「環境のことを考えられることわざをつくってください。たくさんの応募をお待ちしています」と話していた。

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