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すばらしい三十一音の感情

少ない言葉で表せる限りない世界

 

みなさんは「短歌」を詠んだことがあるだろうか?短歌は、五・七・五・七・七の31音で構成される短い詩。俳句と違い「季語」と呼ばれる季節を表す言葉を使わずに句を詠むことができるのが大きな特徴だ。石巻で歌人として活躍している近江瞬さんに話を聞いた。

近江さんは、昨年5月、初の歌集「飛び散れ、水たち」(左右社)を発表した。「一昨年、お話があり、いつか歌集を出したいと思っていたので、チャンスだと思いました」と話す。歌集には、5年くらいかけて詠んだ5000首の中から353首が収録された。まず700首にしぼり、さらに選ぶ。出版社のみなさんと相談し、あまり時間はかからなかったそうだ。作品には自信があったが、読者の反応が気になった。

中学生のころから、日々の生活の中で感じた「もやもやした感情」を詩にしていたが、仲間たちと見せ合いをするくらいで、どこかに発表することはなかった。字数や形が決まってない詩は、自分の思うように言葉を綴ることができる一方で、どんなに短くても長くても、詩になってしまうので「自由だけど不自由だな」と思っていたという。

ある日、書店で俵万智さんの歌集「サラダ記念日」と出会った。少し読んでみると、形が決まっていて不自由でありながらも、短い文に伝えたいことが詰まっていて、短歌はすごく素敵だと思った。それから短歌を始めたそうだ。

短歌を詠むときは、自分らしい歌を詠みたい、歌を詠んだ人に素敵だなと思ってもらえるといいなと考えている。できるだけ「悲しい」「暗い」といったマイナスなイメージの歌は詠まないと決めている。悩んだときは、とにかく悩むようにしていて、それでも思いつかないときは、一度メモに残して別の歌を詠んだり、言葉の順を入れ替えたりと、試行錯誤して詩を詠んでいるそうだ。

短歌はひとりでも詠めるが、一緒に詠んでくれる、頑張ってくれる人を見つけることが、より良い作品を詠むためにとても大切であると教えてくれた。

 

近江瞬

石巻在住の歌人。第一歌集「飛び散れ、水たち」で第9回塔新人賞を受賞。村松

 

取材・文
村松 玲里
(蛇田小学校6年生)

 

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