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みんなとつながる 編んだもんだら

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かわいいかわいい海の仲間たち

 

「東日本大震災で津波の被害にあった女性たちの生きがいを作りたい」という思いから生まれたアクリルタワシ「編んだもんだら」。約20人の編み手により、今では年間約1万個の注文に対応している。このプロジェクトを始めた足立千佳子さんに話を聞いた。

編んだもんだらの「もんだら」はタワシのこと。昔の人は釜を洗う時、もんだワラ(もんだら)に川原の砂をつけてこげを洗い落とした。自然との暮らしを大切にしていた昔の人の知恵を次の世代につなぎたい、という思いでつけた名前が「編んだもんだら」だ。

足立さんは、震災で元気をなくした人たち、特に高齢の女性たちが元気になるように、という思いから編みものを始めた。タワシのデザインは足立さんが編みながら考える。見た目だけではなく生き物の中身まで細かく考える。編み手たちが認めてくれないと商品化されない。

たとえば、「メカブ」(ワカメの根元の部分)を編んだ時、「メカブは茎があってメカブだ。茎がなかったらメカブじゃない」と言われた。編みものだからって見た目だけを作ってはいけないと編み手は言っているのだ。ウニを編む時も、最初、「ウニのトゲトゲは毛糸では編めない」と言われたので、足立さんはしばらくあきらめていた。でも、がんばって編んで認めてもらえた。今では12種類の海の生き物が商品化されている。

足立さんは編み手に「むずかしい」と言われないように工夫する。「写真の通りに作ってください」というむずかしい注文が来たときにも、編み手に「むずかしい」と言われないようにすてきなデザインを考える。なかなか大変なことだ。そして、編み手に「できたよ!」と言われることにやりがいを感じている。

最初の年に3万個、これまでに合計10万個以上が売れた。今では、1年に約1万個の注文が入る。山梨県教職員組合のみなさんは、毎年3千個買ってくれている。買った人から「かわいくて使えません」という手紙が来ることがあるが、「タワシですから、ぜひ使ってほしいです」と足立さんは言う。「編み手さんたちみんなが、心をこめて一生懸命編んだものだから大切に使ってほしいです。東日本大震災から10年が過ぎましたが、これからもがんばろうね、いつまでも元気で一緒に編もうね」と編み手さんたちにエールを送る。

 


▲一番人気は「やっぱり志津川のタコ!」と足立さん

 


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取材・文
松川 美桜
(二俣小学校4年生)

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