ある日、校長先生が朝会で、石巻の魚市場が世界一長い魚市場としてギネスブックに認定されたことを教えてくれた。どんなところがすごいのだろう。実際に魚市場に行って聞いてみた。
石巻市の魚市場は東日本大震災の後に新たに作られた。世界で一番長い魚市場としてギネスブックに登録されている。旧魚市場は約660メートル。アジアでは一番長いと言われていた。今の魚市場の長さは875・47メートル。
「長さで世界一にしようと思ったわけではないんです。新しく市場を作ることになったときに、石巻を世界中の魚の取引ができる国際水産都市にしたいと考えて、衛生管理の行き届いた市場を作ろうとしたために、結果として大きくなりました」と話してくれたのは須能邦雄さん。石巻市水産振興協議会の会長だ。
「金メダルが世界一だと誰もがわかるように、ギネスブックに認定されていると、世界中の誰からも一番だとわかるでしょう?だから登録しました」。
認定されてから観光目的で市場を訪れる人が増え、移動する距離が長くなったけれど、仕事がしやすくなったそうだ。

石巻に最初に市場ができたのは昭和14年2月。昭和38年に近代的な市場を作ろうという話がでて、昭和48年に魚町に完成した。
昨年の水揚げ高は約9万9千トン。売上高は約163億円だ。一番たくさん取れた魚はサバ。過去最高の水揚げ高を記録したのは平成18年の17万8千トン。その頃に比べると漁獲量は減っているのだろうか?
「ここ数年取れていないのは、小女子、メロウド。小女子はメロウドの子どもです。ほぼ皆無です。量がいちじるしく減少しているのはカツオ、イカ、タラです」と教えてくれたのは石巻魚市場管理事務所の斉藤俊和さんだ。寒流系の魚が減っているという。逆に、最近、取れ始めているのはシイラ、サワラなど暖流系の魚で、なんと、たまに伊勢海老も取れるそうだ。

海の状況が変わってきている。地球温暖化の影響で、平均気温が上がり、水温が上がっていることが原因の一つ。暖流と寒流の流れが変わってきているそうだ。その他にも、自然災害などいろいろな理由が考えられる。
東日本大震災では大変な被害を受けた。「津波が約8メートルの高さで市場を襲いました。全部流されました」と須能さんは話す。果たして復興できるだろうかと絶望的になったが、4年半後に完全復旧した。
震災の経験から、仲間意識の大切さを痛感した。自分には関係ないと思わずに、自分にも何かできるだろうと思い、探すこと。無駄なことと思わずに日頃からコミュニケーションをとって、協力して、いざというときにみんなと団結できるようにしておくことが非常に重要だ。
取材した日は2022年1月5日。石巻魚市場の初競の日だ。朝早くから、多勢の人が集まり、競りにかけられる魚が並んで、活気にあふれていた。石巻地域では、キンキは「吉次」と呼ばれ、「吉が次に来る」と言われ好まれている。子持ちのナメタガレイは「子宝に恵まれる」として、正月のごちそうの魚だ。どうか今年も大漁でありますように。新鮮でおいしい石巻の魚がみなさんの食卓に届きますように。


取材・文
阿部 壮汰(渡波小学校3年生)