通常、米国アイオワ州のグリネル大学には春休みがある。この時期に学生たちは暖かい場所へ旅行に行ったり、寮で映画をみたりしてまったり過ごす。しかし、今年はCOVID―19(新型コロナウイルス)の影響で春休み中にグリネルを離れることになった。大半の学生が寮に住んでいるため、お風呂や洗濯機などを共有する生活は感染の危険性があるからだ。大学は、直ちに全学生にアンケートを行い、家庭の事情がある学生や家に帰れないインター生以外を対象に、寮からすぐに出るよう依頼した。学生たちの中では批判の声も上がり、私も寮からすぐに出ないといけないことに不満を抱いた。
しかし、4月に感染が広がり、各地で医療崩壊により命の選別が行われるニュースを見てショックを受けた。医療機器が不足しているため、回復する可能性が低い患者さんには治療の継続が行われなかった。これをみて、大学の判断が正しかったことに気がついた。大学は学生の立場や安全だけではなく、グリネル市民の安全も考えていたのだ。
グリネルは小さな町で、大きな病院は1つしかなく、4月の時点で呼吸器の数は限られていたそうだ。高齢者も多いため、感染が広まったら対応は難しくなるだろう。自分の健康はもちろん大事だが、高齢者や体が弱い人のために取るべき行動について考えさせられた。
“put yourself in someone’s shoes”(直訳「他人の靴に入る」)という表現がある。「他人の立場に立って考えてみる」ということだ。この非常時に自己中心に考えないことは難しい。感染予防にマスクをほしいと思うのも、自分を守るために必要な行動だ。実際、私も最初は自分の安全や健康面しか考えずに行動していた。でも、もし私がCOVID―19に感染してしまい、治療を断られる側であったら家族はどう思うだろうか。
一時帰国して3カ月が経つ。石巻のおじいちゃんとおばあちゃんに会いにすぐにでも行きたいが、今は移動を自粛するべきだ。COVID―19が終息したら石巻に行きたい。
福島文遥