この企画では東日本大震災で被災した宮城県沿岸部15市町にあるポケモンのマンホールのふたと震災遺構についてレポートします。
海の世界と陸の世界のお話
南三陸町のポケふたには、宮城応援ポケモン「ラプラス」と、ふんしゃポケモン「オクタン」の2匹が描かれている。
今回の舞台は海の中だ。ラプラスは普段、海の上にいる。でも、今回は潜ってる。海の中がどうなっているのか見たかったのだろう。なぜなら、南三陸町の海は、たくさんの生き物や海藻が生きているので、2018年にラムサ
ール条約湿地に登録されているからだ。
ラプラスは、ワカメの間にいるオクタン母子に出会ったところ。オクタンはいつも海の底で暮らしている。母のオクタンは、多分、前にもラプラスに会ったことがある。初めてラプラスを見る子どものオクタンに「あ!ラプラスが来たよ」と教えているように見える。ラプラスはオクタンに海の外の世界のことを話し、オクタンは海の中のことをラプラスに教えてあげるのだろう。
このポケふたは、南三陸町のハマーレ歌津の駐車場にある。
後世へつなぐ教訓と記録
ここもまた海とともに暮らしてきた町だ。町内にあった5つの鉄道駅も全てが甚大な被害を受け、いまではBRT(バス高速輸送システム)の駅になっている。この地震によって、同町志津川地区の地盤が大きくずれたのだそうだ。被害は大きい。
旧南三陸町庁舎は、津波によって、原型をとどめないほどの大きな被害を受け、隣接する防災庁舎の屋上に避難していた43人の職員や近隣住民が亡くなった。建物の柱は折れ曲がり、ワイヤーもむき出しの状態になっている。町民は解体を希望したが、宮城県は、次世代に津波の被害を伝えるための震災遺構として高い価値があるとし、結論を20年間先延ばしにする提案をした。それからすでに10年がすぎた。
こんな話に出会った。セブンイレブン宮城歌津店の外に設置されていた郵便ポストが、1年9カ月を経て、沖縄県西表島の砂浜に流れ着いたそうだ。直線距離にして2400キロも離れている。あげぇ(方言で「赤い」)ポストのたびまつり実行委員会によると、太平洋の潮の流れではそのまま南下できず、通常は東の方向へとむかっていく。海に出たポストは日本の東の黒潮を通って、亜熱帯循環海流という太平洋全体をまわるルートへと運ばれた可能性が高いのだそうだ。しかし、ハワイ諸島を回り込む形で沖縄を目指したのか、アメリカ大陸まで航海したのか、本当のことは誰にもわからない、とのこと。このポストは現在、ハマーレ歌津内の「かもめの本屋さん」横に展示されている。
震災前の歌津地区は、商店街に行けば生活に必要なものが全てそろう町だった。
震災前から酒店を営んでいる佐藤康さん(63)に話を聞いた。父親の代から続いていたが、津波で流出。復興商店街として新たに誕生したハマーレ歌津に移転してから4周年を迎えた。震災後、全国各地からたくさんの人たちが訪れいろいろな方法で励ましてくれた。「バニング(ミニバン等のワゴン車を用いたカスタム用法のこと)のイベントはにぎやかで楽しかったですよ」。並べられたたくさんの車を見て、おもしろいな、すごいなと感じたそう。
コロナウイルス感染拡大の影響もあり、訪れる人は極端に減っている。次にイベントが開催されるときにはたくさんの人々が集まることを願う。
南三陸町
人口
12,188人(令和4年4月1日現在)
東日本大震災による人的被害
620人 行方不明者211人
(南三陸町ホームページより)
取材・文・写真
阿部 壮汰(渡波小学校3年生)
阿部 匠之介(渡波中学校2年生)