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ポケふたと震災遺構 津波湾を知っていますか?津波によって地形が大きく変わった町 山元町

この企画では東日本大震災で被災した宮城県沿岸部15市町にあるポケモンのマンホールのふたと震災遺構についてレポートします。

ポケふたはラッキー 一緒に復興頑張ろう

山元町のポケふたには宮城県応援ポケモンの「ラプラス」と福島応援ポケモンの「ラッキー」の2匹が描かれている。
ラプラスが旅をしていて、ラッキーと出会い、「よろしく!」と言っているように見える。ラッキーはたまごポケモンで、おなかにかかえているのは栄養満点のたまごだ。ほとんどのポケモンがたまごが大好物だから、ラプラスにおすそわけしようとしているのかもしれない。ラッキーは進化すると、しあわせポケモン「ハピナス」になる。もしかすると、幸せを卵といっしょにして渡そうとしているのかもしれない。
福島は東日本大震災の地震と津波だけでなく、原子力発電所の事故の被害も受けた。それでも、ラッキーがたまごを渡すとしたら、ラプラスはお返ししなきゃいけないと思っているだろう。
このポケふたはJR常磐線の坂元駅の前にある。

的確な判断と幸運に救われた90の命

県内有数のイチゴの産地として隣の亘理町とともに有名な県南部に位置する町、山元町。海岸線と平野が広がるのどかな町だ。山元町は東日本大震災によって水田の約70%が浸水し、ほぼすべてのイチゴ農家が被災した。震災では津波とともに火災が各地で発生したが、町内では火災は1件も起きなかった。
山元町の震災遺構中浜小学校には、地震の後、児童と教員、保護者合わせて90人が避難した。当時の校長の判断で、全員が屋上の狭い屋根裏に避難し、寒さと余震におびえながら一夜を過ごした。校舎の3階から屋根裏に上がるための非常用の階段は普段入れない場所にあり、当時の児童たちはその存在を知らなかった。初めて見た狭くて急な階段で避難をした児童たちはきっと不安でいっぱいだったに違いない。
小さな幸運もあった。3月11日の2日前、3月9日にも大きな地震があり、学校では防災対策を見直した。津波が来たときのための対策として毛布を準備していたことが役立ち、子どもたちは寒さに耐えることができた。
山元町に押し寄せた津波の勢いはものすごく、当時予想されていた浸水域を大幅に超えて内陸に押し寄せ、「津波湾」と呼ばれるものができた。山元町教育委員会の齋藤俊貴さんによると、もともと湾でなかった地形が波の力によって削られ、くぼんでしまった海岸のことを「津波湾」と言う。中浜小学校の資料で空から撮影した地形の画像を見ると、多数の津波湾が確認でき、改めて波の強さ、恐ろしさが伝わってくる。
震災遺構中浜小学校は、役所や専門家、教員、住民が意見交換を重ねた丁寧なプロセスと展示の仕方など様々な特徴が評価され、2020年にグットデザイン賞も受賞した。展示の説明も分かりやすく見やすく、震災の学習にぴったりだ。ぜひ一度足を運んで欲しい。

震災遺構中浜小学校
震災遺構中浜小学校

山元町

人口
11,895人(令和4年4月現在)
東日本大震災による人的被害
637人
(山元町ホームページより)

取材・文・写真
阿部 壮汰(渡波小学校4年生)
阿部 匠之介(渡波中学校3年生)

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