If you can dream it, you can do it.
この取材の実現にはたくさんのみなさんからの応援があった。マツダに連絡をしてくれた亘理比呂樹さん、その連絡を受けてくれた町田晃さん、そして、ロータリーエンジンの開発に携わっていた山本修弘さんにお話を聞いた。
100から1をひいたら0。それが日本のものづくり
マツダ株式会社
ロードスターアンバサダー
山本 修弘さん
生きていないはずのものに命を感じる瞬間。感じたことはありますか?
山本修弘さんは、マツダのRX7というロータリーエンジン車の設計にたずさわった。
山本さんが、マツダに入社したきっかけは、中学2年の時、「ロータリーエンジンの知識」という本を読み、心をうたれたからだ。「ロータリーエンジンを開発するためマツダに入ろうと決めました」と話す。自動車メーカーの中でも、比較的規模が小さく、社内全体が見わたせ、一致団結できて、みんなが同じ目的へ向かってがんばることができる、共創した取り組みができると思ったそうだ。共創した取り組みとは、生き物のように〝愛着のある〟車をデザイン、設計することだと山本さんは言う。
「『ものづくり』にとっては、100―1=99ではなく、100―1=0なのです。ものをつくるときには、1つでもミスや不具合をだすと、それは0になります。だから、みんなで力を合わせて、1つの『ありたい姿』をつくるんです」。それがマツダの車づくりだと山本さんは考えているそうだ。
マツダの車づくりについて
RX7とロータリーエンジン
RX7とはロータリーエンジンを搭載したマツダの国産スポーツカーである。ロータリーエンジンはマツダが独自に開発したエンジンで、普通のエンジンとは違い三角のローターと呼ばれるものがエンジン内部で回転し、車を動かす吸気、圧縮、点火、排気の4つの工程を行う。ジェットエンジンのように静かに加速していくエンジンを目指し、その開発に成功した。 ロータリーエンジンのよいところは、なんといっても小さいこと。コンパクトで軽量ながら加速がよく、かなりのパワーを発揮できることだ。だが、たった一つ弱点がある。それは、燃費が悪いこと。燃費の改善は、シールの気密性の改善や、燃焼の改善、抵抗を小さくするなど行ったそうだ。
RX7の次にロータリーエンジンを搭載したRX8では、二本の細い管をエンジンに取り付けて、手前にこぼれだしていた燃料を燃焼室に吹き飛ばした。結果、燃料がスムーズに吸気口に吸い込まれ、アイドリングの状態で、RⅩ7に比べ、燃料効率が一気に40%も改善された。それでもやはり普通のレシプロエンジンに比べて、今のところ燃費は悪い。
RX7には、燃費は劣るがそれを忘れさせるようなすばらしい点がたくさんある。まず、フロントミッドシップであることだ。エンジンがフロントタイヤより後ろの、ちょうど車の真ん中にある。ミッドシップでは重量が後ろに片寄り、後ろのタイヤの踏ん張りが上がり車の重心に重いエンジンがあることで、旋回に入りやすく、また、それを止めやすい。しかし、車が限界を超えてコーナーに進入してしまうと、スピンに入りやすくなってしまうという弱点がある。オーバースピードでコーナーに進入してしまうと、重い後ろが外側に行こうとしてオーバーステアになり、ハンドル操作が難しくなってしまうのだ。逆にフロントに重量が寄ってしまうと、これもまた限界領域だと曲がりにくい。物体の回転のしにくさを示す慣性モーメント値が大きいほど、物体は回転しにくいがフロントミッドシップにすると慣性モーメント値が小さいので運動性能が上がり良く曲がるようになる。山本さんによると、重い物を車の真ん中に置けば曲がりやすくなるということだった。
RⅩ7FD3Sまでは、ヘッドライトが開閉するリトラクタブルヘッドライトを採用しているが、RⅩ8からは採用されなくなった。ライトが開くことによって空気抵抗が悪くなってしまうことと、ヨーロッパのレギューションにあわないからだそう。ライトが開くと下の視界が2度悪くなってしまうことがその原因だ。レギュレーションを達成して採用した車を作りたいと山本さんは話していた。
【取材・文】
小俣 翔太郎(矢本第二中学校3年生)
サポーターとして石巻日日こども新聞をずっと応援しています。第30号の小俣渓志郎さんの記事を読んで何かできないかと思い、いてもたってもいられなくなってマツダに電話をしてしまいました。小俣渓志郎くんが夢を叶えるきっかけを作ることができてとてもうれしいです。
思い出も流された東日本大震災
マツダ株式会社広報本部国内広報部経営グループ
マネージャー町田 晃さん
▲津波の被害にあった車の撤去作業はとても心が痛むことでした。
今回、亘理さんからの連絡に対応してくれた広報部の町田晃さん。町田さんは、東日本大震災直後、津波の被害にあった車の回収作業にたずさわった。「震災発生後、社内で被災した車の回収作業の要請があり、私も1週間対応しました」と町田さん。4〜5人でチームを作り、交代で4月ごろまで作業が続いた。計画をたてて毎日5台〜10台ぐらいの車を処分した。津波の水につかってしまった車は、被害の程度にもよるが、廃車にするか、程度によっては直すこともできた。「まずは持ち主との相談から始りました。みなさん、車との思い出を話してくれました。壊れてしまった車を見て悲しんでいる様子には心が痛み、とても辛い気持ちになりました」
広島復興のキーワードは「一致団結」
「ヒロシマ」を知るための場所
原爆ドーム
現在「原爆ドーム」と呼ばれている建物は、もともと「広島県物産陳列館」として、新商品や地元産品を宣伝するために1915年に建てられた。設計したのはチェコの建築家ヤン・レッツェル(1880―1925)。
実は、宮城県とつながりがある。当時、宮城県知事だった寺田祐之(1851―1917)は、1913年、広島県知事に転属となり、宮城県松島町にあった「松島パークホテル」を設計したヤン・レッツェルに設計を依頼した。松島パークホテルは1913年に建築され、1969年火災により閉業した。今はもうない。
広島平和記念資料館
1945年8月6日、広島になにが起きたかを伝える場所だ。1955年に開館し、今年4月にリニューアルされ、より多くの資料を見ることができるようになった。館内ボランティアの忍岡妙子さんは、「来場者のみなさんには、74年前、一番初歩的な核兵器で何が起きたのか実感してほしいです。今、世界の9カ国が核兵器を持って脅しあっています。その1発ずつが、平均して、広島に落とされたものの数百倍の威力を持っていて、それぞれの国が一番敵とみなしている国に対して、実戦配備されているわけです。もし使われたら、ある国が勝った負けたの話ではないのです。これを起こさせないために、最初の原爆で何が起こったのかを考えるための原点にしてもらいたいです」と話してくれた。
おりづるタワー
2016年開館。屋上からは原爆ドームを見下ろすことができ衝撃的だ。爆心点を見上げる場所もある。来館者の手による「おりづる」を「飛ばせる」ことができる「おりづるの壁」にはすでに50万羽を超えるおりづるが納められている。おりづるタワーの兒玉健次郎さんは、広島の復興を実現したものは人々が一つに結束する力だと思うと教えてくれた。「おりづるタワーの屋上から、広島の街全体を見渡すことにより、人の復興にかける力を感じることができるはずです」と話してくれた。
▶ピンクの部分が原爆で焼失した。マツダ本社は奇跡的に無事だった
おりづるタワー
住 所 広島県広島市中区大手町1丁目2-1
電話番号 ☎082-569-6803
▲おりづるタワーの屋上からは原爆ドームの敷地内が見える
【取材・文】
小俣 翔太郎(矢本第二中学校3年生)
翔太郎のマツダQ&A
翔太郎『マツダの社名はアルファベットで書くと「MAZDA」です。ローマ字表記だと「MATSUDA」ではないのですか?』
マツダくん『これは、古代ペルシャを起源とするゾロアスター教の神「アフラ・マズダー(Ahura Mazdā)」にちなみました。アフラ・マズダーはゾロアスター教では世界を作った最高神です。』
翔太郎『そうなんですね!外国の人たちにも発音しやすくていいですね。ところで、マツダZoom-Zoomスタジアムの名前やCMで使われている「Zoom-Zoom」はどういう意味ですか?』
マツダくん『これは英語です。小さな子どもが、車を見たとき、日本語ならどう言いますか?』
翔太郎『「ブーブー」でしょうか?』
マツダくん『そう!それ!』
翔太郎『そうなんですか!CMでは「ブーブーブー」って歌っているんですね!面白いです。広島本社で働いている人は何人ぐらいですか?』
マツダくん『約1万5千人です。』
翔太郎『ぼくが住む東松島市の人口は約4万人。それを考えるととても大きいですね!』
マツダくん『広島本社の敷地は東西に7kmあります。実はそこには、つい最近まで世界一だったものがあるんですよ!』
翔太郎『なんですか?』
マツダくん『「東洋大橋」です。1965年に建設された時は、ひとつの企業が持っている橋としては世界最大でした。車専用ですが、敷地内にあるので、一般の車は通れません。』
翔太郎『さっき渡ったのはその橋なんですね!すごい!』
マツダくん『実は1年に1回、人も渡ることができます。』
翔太郎『いつですか?』
マツダくん『マツダ主催の駅伝の時です。翔太郎くんは陸上部だそうですね。今度走りに来ませんか?』
翔太郎『はい!ぜひ来たいです。ところで前から思っていたことがあるんですが、お年寄りがアクセルとブレーキを踏み間違える事故は、マニュアルトランスミッションにしてしまえば解決するのではないでしょうか?マニュアルなら、発進時にアクセルを全開で踏んでしまってもエンストして止まってしまうでしょう?』
マツダくん『確かにそうです。人間は便利なモノを使うと戻れなくなってしまうんです。どうしていくべきか真剣に考えなければなりません。』