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父の意志引き継ぐ 若生工業株式会社

若生工業株式会社(石巻市清水町)は、学校などの建物、道路、橋など街に必要なものを作ったり、雨が降った時に洪水から街を守るための堤防の手入れや壊れた部分を直したりする仕事をしている建設会社。社員は約80名。先代の社長の時代から受け継いだ庭園は、地域住民に開放され喜ばれている。

桜とチューリップが同時に咲いた年の庭園▶

社長の若生 保彦さんは石巻生まれ、石巻育ち。「山下小学校、石巻中学校、石巻高校に通いました。全部、日和山の上にあります。毎日、登っていました」

30年以上前、お父さんである先代の社長がチューリップを植えた。「もともとはテニスコートだった場所です。父は、植えるのが楽しくなってきたようで、だんだんチューリップの面積が増えていきました」と笑う。今の形になったのは14年ほど前だそう。チューリップをはじめ70種類以上の草木の花が咲きほこる庭園になり、毎年、園児や小学生、地域のみなさん、1、000人を超える人々が訪れるようになった。毎年、写真を送ってくれる人もいるそうだ。
庭園担当は社員の松川 正幸さん。今年で11年目のベテランだ。庭園には図面があって、チューリップの球根は正確に位置を図ってから植える。球根は咲くまで色がわからないから、管理も重要だ。春先の気温次第では、桜とチューリップの見ごろが重なることもあり、とてもきれいだそうだ。

 

◀東日本大震災直後の庭園。丸4日間、すっかり冠水した。

 

 

東日本大震災の時は、庭園を含め、社屋全体の1階部分が4日間水に浸かってしまった。「津波の水ですから、塩水です。水が引いて、4月の初めごろ、固くなってしまったヘドロを10㌢ぐらい、きれいにとりました。1カ月ぐらいかかりました。前の秋に植えたチューリップは全滅でした。土はすっかりだめになってしまいました」と松川さんは残念そうに話す。木は花を咲かせるために大きなエネルギーを使う。震災の年、桜は花を咲かせた。「大丈夫だった!」とみんな喜んだ。でも、そのあと枯れてしまった。まるで力をふりしぼったように。7本あった桜の木が3本だけ残った。枯れてしまった桜の木は切り株だけが残っている。
花が咲きそろうのは来年4月ごろ。庭園は年間を通じて開放されている。ぜひ見に来てください。

写真提供:若生工業株式会社
【取材・文】千葉 ふうな(大街道小学校4年生)、松川 美桜(二俣小学校2年生)

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