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石巻こけしの生みの親は? 林 貴俊さん

石巻には形や模様がみんなが知っているこけしとは違う一風変わった「石巻こけし」がある。石巻駅前の立町大通り商店街で、呉服屋を営みながら石巻こけしを作っている林貴俊さんに話を聞いた。

東日本大震災の後、復興支援で石巻に大勢の人たちが訪れた。呉服店には手頃なお土産ものがないと思い、新しいお土産品として5年前に石巻こけしを作り始めた。世の中にある石巻こけしは全部林さんが作ったものである。「石巻の思い出にしていただいたり、石巻のことを知り広めてもらえたらいいと思いました」と林さんは言う。
石巻こけしの特徴は、赤と青の2色を使って描く「フィッシュボーダー」という魚の模様だ。他にも、猫の頭巾を被った「猫かぶり」、頭にたこが乗っかった「ニョキポコたこ」など自由な発想のこけしがある。こけしのサイズは主に4寸。寸というのは昔から使われている大きさを表す単位で、1寸は3センチ。つまり、石巻こけしの大きさは12センチだ。他にも3寸や5寸のものも作るが、今まで作った1番大きなこけしは14寸だそう。
作り方は、まず、木工旋盤に何も加工がされていない角材をセットし、回しながら刃物を使ってこけしの形に削ったり切ったりして整える。木材は主にイタヤカエデ。メープルの仲間で岩手産が多い。こけしの形ができたら、筆を使い、染料や墨汁で絵付けをする。ぐるぐる回っている木に筆を置くとまっすぐのきれいな線を引くこともできる。色は世界にあるだけ使って個性的な柄を自由に描いていく。それが終わったらろう引きで仕上げをし、最後に名前を書いて完成だ。
5年間に数え切れないほどのこけしを作った。少なくとも週に3日、1日に10体、多いときは20体から30体のこけしが生まれる。作業には集中力が必要なため、一度にたくさんは作れない。難しいと感じたことはないけれど、似顔絵を描いてくださいと言われたときは少し難しかったそうだ。
実はこの石巻こけし、アイドルグループ嵐の松本潤さんが主演するテレビドラマ「99・9 ―刑事専門弁護士 SEASONⅡ」に登場したことがある。ドラマの美術を担当しているスタッフが、SNSでこけしを見つけて面白いと思ってくれたそうだ。
石巻こけしの柄には呉服屋として勉強した着物の文様の成り立ちなどの知識や経験も生かされている。型にはまらない石巻こけしは、林さんにしか生み出せない、世界でここだけの特別なこけしだ。皆さんもぜひ、石巻に来たら、林さんの石巻こけしを買ってみてください!

 


▲1体1体、丁寧に作られる

▲フィッシュボーダー」「パイセン」「タコ乗せ」など名前もユニークだ


▲取材の日は旅行会社主催の石巻こけしワークショップが行われていた。林さんの指導でユニークなこけしがたくさん誕生していた

【取材・文】
今野 ひなた(蛇田小学校5年生)

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