2025/05/11
阿部 壮汰
阿部 匠之介
東日本大震災や少子高齢化の影響で、生活文化や伝統を直接子こどもたちに伝える機会が減っている。みんなで郷土料理を作って味わい、その思い出でといっしょに次世代に伝え残す取り組み「みらいに残す、ふるさとの食卓~大人から子どもたちへ 伝えて おきたい味と思い出」を取材した。
宮城の郷土料理おくずかけ
「おくずかけ」は野菜やこんにゃく、とうふ、 まめふなどをしいたけの戻し汁で煮たとろみのついたしょうゆ味の汁ものだ。季節や家庭 によって材料が違ちがう。あおい地区は、半分以上が大曲地区から移転してきた人たちなので、この日は大曲地区の作つくり方で、子どもたちが、地域のお年寄りを見守る見守り隊のみなさんと一緒につくった。大曲地区では、彼岸などの仏時は、赤い野菜は使わないそうで、今回はにんじんを入いれなかった。見守り隊の女性は、「今日のおくずかけは子どもたちが上手に作ってくれたので、とてもおいしくできました」と話していた。
この日訪おとずれた前石巻専修大学学長の 坂田 隆さんは、「おくずかけの調査をしていた時とき、すべての家の共通点は『まめふ』のみでした。家庭によって違うのが郷土料理 の魅力だと思います。地元においしいもの、 魅力がたくさんあること知り、自信を持って 発信してほしいです」と話していた。
女川のおぞうには、もちと、だいこん、にんじん、ごぼうの千切り、まめもやし、しみどうふ、セリなど、具だくさんのしょうゆ 味。子どもたちが、女川町食生活改善推進員会のみなさんといっしょに作った。食材を提供した㈱石巻青果の門間 義典さんは「地域の食材をもっとみなさんに知ってもらいたいので、伝統食、行事食のおぞうにをみんなでつくって食べることはすばらしいです」と話 していた。参加した子どもは「にんじんがかたく千切りが意外とむずかしかった」と話していた。
女川小獅子振り隊の発表
おぞうにを食べたあと、女川小獅子振り隊 による獅子振りの発表があった。鈴木 碧虎 さんは「頭をかんだ時のお客さんの笑顔を見ることがやりがいです。大人に負けない 演技をめざして中学校でも続けていきます」、 佐藤 弥里さんは「獅子の顔やつなげる言葉が地域によって違うところが魅力です。盛り上げてくれるお客さんが演技の力になります。」と力強い言葉で話した。ふたりとも獅子振り隊の創設メンバーだ。昔から、女川では獅子振りが盛んで新年には町中を回っていた。東日本大震災のあと、集団避難先だった秋田県仙北市のホテルで、人々を元気づけようと獅子振りを披露した。ホテルの座布団やスリッパで手づくりの座布団獅子振り、みんな涙を流した。竹浦獅子振り保存会の阿部 貞さんは「女川の獅子振りは復興の原点です。伝統を受け継ごうとする子どもたちから、獅子振りの縦、横のつながりを広げる力を強く感じます。祭りなくして復興なし。これからも獅子振りの力で町をにぎやかにしていきたいです」と話していた。
仙北市生まれの座布団獅子
石巻地域に古くから伝わるおやつ「がんづき」には、白いものと茶色いものがある。小麦粉、砂糖、水をまぜ生地をつくり、子どもたちが真剣に型に流し込んだ。茶色いがんづきには黒糖を使う。初めて黒糖を食べた 子どもは、「(苦にが みがあって)コーヒーみたい」と話していた。蒸しあがったがんづきは、たこ糸で切って小さくわけた。次にながし焼きづくりに挑戦。ホットプレートに生地を流し込み、表面に気泡が出てきたら、ひっくり返す。そのまま食べてもおいし いが、バターとはちみつをかける食べ方が子どもたちに人気だった。参加した黒田 哲太さんは「がんづきもながし焼きも初めて食べました。とてもおいしかったです」と話していた。二子地区は、東日本大震災のあとに石巻のいろいろなところから人が集まってできた 新しい町だ。作り方を教えてくれた山下 陽子さんは、「二子地区にひとりでも多くの人が 集まってほしいです」とにこやかに話してくれた。二子西町内会長の山下 憲一さんは、「昔ながらの食が伝わりました。震災前の地域のいろんなことを伝えたいです」とうれしそうだった。
白いがんづき