ふるさとの味を未来へ
宮城の伝統、おくずかけ
東松島市あおい地区にて

2024/11/20

取材したこども記者

阿部 壮汰

阿部 匠之介

9月21日(土)、東松島市あおい地区にあるあおい西集会所で、「第2回みらいに残す ふるさとの食卓」(主催:こどもみらい研究所)が行われ、あおい地区の住人と見守り隊のみなさん、地域の子どもたちやなど多くの人々が参加し、宮城の郷土料理「おくずかけ」を作った。


東日本大震災の津波で、もともといた場所に住めなくなりほかの場所に移転して生活しなければならない状況や、少子高齢化の影響で、生活文化や伝統を直接子どもたちに伝える機会が減っている。そこで、みんなで郷土料理を作って味わい、その思い出といっしょに次世代に伝え残す目的で開催された。

完成した「おくずかけ」を取り分ける参加者。

「おくずかけ」は季節や家庭によって作り方、材料が違う。あおい地区は、半分以上が大曲地区から移転してきた人たちなので、この日は、大曲地区の作り方でおくずかけをつくった。彼岸などの「仏の料理」の時は、赤い野菜は使わないそうで、今回は人参を入れなかった。初めて野菜を切る子どももいて、親といっしょに挑戦していた。料理の合間には、けん玉、おはじきなど昔の遊びをみんなで体験した。そして、熱々のおくずかけを温麺の入った皿にみんなで交代しながら盛り付けた。

見守り隊の女性は、「今日のおくずかけはとてもおいしくできました。参加人数が多かったので、みんなで協力して早くできました。子どもたちも上手に作ってくれました」と話した。あおい地区に移り住んだお年寄りを見守る見守り隊の活動では、イベントに参加することも多いが、今回は大人から子どもまでいろんな人と交流ができてよかったと話していた。

参加した親子は、「だしがきいていておいしかったです。普段、大勢で食事をするイベントにはあまり参加しないのですが、震災のことを考えると、このような機会は貴重だと感じました」と話していた。

イベントがつなぐ伝統の食

前石巻専修大学学長で、書籍「たべる つくる 石巻」(日本家政学会出版)の著者のひとりである坂田 隆さんも参加した。


「たべる つくる 石巻」(日本家政学会)

「たべる つくる 石巻」は、坂田さんが、東日本大震災後、復興住宅の調査をしている際、郷土料理が消滅してしまうのではないかと危機感を感じ、地元の割烹料理店「滝川」の料理長、阿部 司さんらと一緒に作った料理本だ。

「別の研究の調査で、仮設住宅の高齢女性たちがが、『何もやる気が起きない』と話しているのを聞いて、スタッフが『今まさに郷土料理がなくなる瞬間を感じる』と言っていました」と坂田さん。「郷土料理は客観的には同じですが、家によって違います。おくずかけを調査していた時、全ての家の共通点はまめふのみでした。みなさんへのインタビューを繰り返す度に、新しいものが出てきたんです。それが郷土料理の魅力だと思います」と坂田さんは言う。

このようなイベントを開催し、実際に作ることが本を出版した時の目標だった。郷土料理を教えることは、お年寄りの活躍の機会となり、料理を通して 子どもたちに変化がおきるきっかけになる。この日も家に帰ってから、おくずかけの話で家族団らんの時間を過ごしてほしい、と坂田さんは言う。

そして、郷土料理には、実は、もう1つ大切な目的があると言う。「それは、若い人たちに地元を誇りに思ってもらうことです。石巻は食材も料理も豊か。地域外のみなさんは、まだまだ石巻の魅力を知らないし、人は自分のいい所が分からないもの。だから、このようなイベントを通して、地元においしいもの、魅力がたくさんあること知り、自信を持って発信してほしいです」と坂田さんは話していた。

「みらいに残す、ふるさとの食卓」動画もぜひご覧ください。
https://kodomokisha.net/recipe/

 

【取材・文】阿部 壮汰(渡波小学校6年生)、阿部 匠之介(東北学院高校2年生)

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