世代を超えた食の繋がり
文化庁が取り組む「100年フード」とは

2025/06/11

取材したこども記者

阿部 匠之介

みなさんは、「100年フード」について知っているだろうか?2021年から始まった文化庁の取り組みだ。私は、昨年から、「みらいに残そう!ふるさとの食卓」という連載取材を行っていて、この取り組みを知り関心を持ち、また、日本の伝統食についてより知りたいという思いが強まっていたので、文化庁の100年フード担当の長谷部 勝さんと成田 彩夏さんに詳しくお話を伺った。


取材はオンラインで行った。上段右が長谷部さん、左が成田さん

文化庁は、今、地域に根付き世代を超えて愛されてきた伝統的な食文化を「100年フード」と名付け、地方自治体や諸団体と連携しながら保護に取り組む継承活動を行っている。もともと文化庁は、遺産などの文化財を保護する取り組みを行っているが、日本の食文化も残していくべきと考え、郷土食や伝統食の継承を行っている団体の支援を始めた。文化財は国が指定するものだが、100年フードは応募して審査を受けてから認定されるもので、2025年5月時点で300件ほどが認定されている。
100年フードの認定基準は大きくわけると3つある。1つ目は独自性や歴史的ストーリーなどの地域特有性があるかどうか。2つ目は1つの店や1つの会社といった狭いものでなく、継承活動に地域的な広がりがあるかどうか。3つ目はそれを保護しよう、盛り上げようとする団体がいるかどうか。これらの観点から審査員によって審査・認定される。認定されたもののなかから審査員特別賞も選出される。審査員は、食文化・文化財・イベント・観光などの分野における有識者や関係者で、昨年度は認定された50件のうちわずか4件のみが特別賞に選ばれた。

千葉の「太巻き祭りずし」。成田さんのおすすめ

文化庁のお二人に、300件の中で思い入れのある100年フードは何か質問してみた。成田さんのお気に入りは「太巻き祭りずし」だ。「千葉出身なので、千葉県の太巻き祭りずしです。小学校の体験学習のクラスで作りました。上手くできなかったけれど、今でもとてもいい思い出です。100年フードに認定されていてうれしいです」と話す。一方、長谷部さんは、「盛岡三大麺の冷麺、じゃじゃ麺、わんこそば」を選んだ。「岩手出身なので。わんこそばは普段は食べませんが、冷麺やじゃじゃ麺は、お酒を飲んだあとのシメによく食べるので好きです」と、2人とも楽しそうにふるさと自慢をしてくれた。

「盛岡三大麺」 冷麺、じゃじゃ麺、わんこそば

100年フードを広めるために、文化庁ではこれまでにスタンプラリーイベントやトークイベント、試食会など様々な取り組みを行ってきた。昨年度のスタンプラリーイベントでは、100年フードを提供しているお店に加え、道の駅や博物館などの食文化関連施設がスポットとなり、回った数によって関連商品をもらうことができた。オンラインのサイトでの参加が可能ということもあり、多くの人が参加したそうだ。

「今、海外の食べ物が日本でもよく流行っていますが、日本にもたくさんいいものがあります。100年フードの活動を通してそれを広めていきたいです」と成田さんは言う。地域の伝統食を若い人たちに知ってもらったり、自ら作ってもらったりして、思い出と共に自然に引き継がれていくこと、認定によって知名度や飲食店の集客や売上アップ、文化の保護、継承に地域振興など、文化だけでなく地域へも好影響を与えられることを目標に継続していく。「100年フードの認定は希望制で、認定されていないものにも素晴らしいものがたくさんあります。認定されたものだけが本来の意味での100年フードではありません。100年フードをきっかけに地域の伝統食に興味を持ってほしいです」と長谷部さんは話していた。

100年フードは今年も募集を予定しており、募集開始は夏〜秋頃を予定しているそうだ。地域の伝統食を知るきっかけとして、是非チェックしてみてほしい。

文化庁|食文化あふれる国・日本

【取材・文】阿部 匠之介(東北学院高校3年生)


 

こども記者:

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