2024/08/11
阿部 匠之介
村松 玲里
この夏、石ノ森萬画館にインターンシップに来ているロディ・リカルドさんとヤエル・チャルビさんは、フランスのアングレーム市にあるヒューマンアカデミーヨーロッパ校で勉強中だ。同校はヨーロッパ初の日本のマンガ・アニメーションの専門学校で、制作技術や文化を学ぶことができる。
【写真:ロディ・リカルドさん(左)、ヤエル・チャルビさん(右)】
ロディさんは、4才のころ、生まれて初めてアニメを見た。その作品は「聖闘士星矢」だった。以来、アニメやゲームに触れてきて、だんだん「これを作りたい、自分のゲームを作りたい」と思うようになった。プログラミングとシナリオについては自分で学んだものの、絵を学ぶには学校に通うべきだと考えて勉強中。最も好きな作品は「CLANNAD(クラナド)」という2007年に初放送された日本のアニメ。作中には強い心の持ち主であるヤンキーのようなキャラクターが登場する。結婚後、子どもを授かるが、ある暗い過去が蘇ってしまうシーンがある。そのようなストーリー展開がとても印象深く面白いと思ったそうだ。
ヤエルさんは「黒執事」を見てアニメが好きになった。高校生ごろから多くのマンガやアニメに出会い、特にそれらのストーリーが好きだった。マンガへの愛をマンガを通して伝えたいと考え、漫画家を志している。少女マンガや女性マンガが好きなヤエルさんは「ホリミヤ」が気に入っている。登場人物の気持ちや考えがうまく表現されていて、みている側もそれを想像することができ楽しいそうだ。ヤエルさんはコスプレも大好きで衣装作りから楽しんでいる。
ヤエルさんのコスプレ作品「SPYxFAMILY ヨル・フォージャー」
ふたりが通うヒューマンアカデミーヨーロッパ校では、2年生まで通学、3年生からは自宅での学習となっている。ゲームコースでは毎日ひたすらキャラクターデザインや裸体などのデッサン、アニメーションを描く。マンガコースでは、実際にマンガを描いている。ふたりとも日本語がとても上手だ。日本人教師もいるため、驚くことに、日本語での授業もあり、作品でも日本語を勉強できるという。ヤエルさんは1年生の時に受けたインクの授業が印象に残っている。中国産の黒色インクを 日本のマンガのペンにつけて、絵を描いた。この授業も日本人教師が担当した。
アングレーム市では、1974年から毎年冬に「アングレーム国際漫画祭」が開催され、人口約4万人のアングレーム市に約20万人が集まる。「いい意味でのカオスになっています。」とロディさん。開催50周年目の2023年には週刊少年マガジンに連載された「進撃の巨人」の作者である諫山 創さんも訪れたそうだ。
ロディさんの作品「みこ」。猫の名前だそう。
フランスでは、石ノ森章太郎の作品を見ることができる機会は少ないので、石ノ森萬画館はすべてがすばらしい、と口をそろえる。ふたりとも、石ノ森萬画館でインターンの経験ができることを心から幸せに思っている。石ノ森作品のなかで、ロディさんは仮面ライダー、ヤエルさんはサイボーグ009が好きだそう。
石巻では、日和山など景色のいい場所だけでなく、みやぎ東日本大震災津波伝承館などの東日本大震災伝承施設を訪ねるべき、とフランスのみなさんに紹介したいそうだ。「美しい場所だが悲しい場所でもあると感じました」とヤエルさんは話す。ロディさんは、自分のレストランを経営しているシェフでもあり、石巻に来ておいしい食べ物をたくさん発見した。コロッケや「まきいし」の「陶板焼ハンバーグ」がとてもおいしかった、と写真を見せてくれた。ヤエルさんはラーメンやすしなどの和食を楽しんでいる。フランスにも和食はあるが、日本のほうがもちろんおいしいし、何より価格が違うそう。日本ではラーメンを1,000円ぐらいで食べられるが、フランスでは3,000円ほどするそうだ。
ロディさんは、2年間、沖縄に住んでいたことがある。美ら海水族館でサメを見たときに圧倒されて「自然の中では自分がとても小さい存在だということを実感しました」と話す。ヤエルさんは「インターンシップが終了したら、1ヶ月間、友人と日本中を旅行し、それをマンガにするつもりです」と話していた。
【取材・文】阿部 匠之介(東北学院高校2年生)、村松 玲里(石巻高校1年生)