未利用魚はサステナブルな海の幸
高い意識と工夫で海を守ろう!

2024/07/11

取材したこども記者

酒井 朱理

前回の取材(「海は変わる〜私たちは自然とともに生きていく」〜2024年4月11日掲載)で、海や川の環境は変化するので、普段食べている魚がとれなくなったり、代わりに他の魚が増えたりすることがわかった。とれる魚が変わると調理法も変わるのだろうか。魚の調理法について、石巻で大正時代から続く「割烹滝川」の料理長、阿部 司さんにお話を聞いた。


阿部さんが一番好きな郷土料理は「どんこ汁」

未利用魚とはどういう魚のことだろうか?「ちょうどいいサイズで、使いたい、食べたいと思うのが普通の魚とすると、理由があって使われていない魚が未利用魚です。小さすぎる、大きすぎる場合は下処理に時間がかかって鮮度が落ちてしまうし、食べ方がわからないなどの理由で未利用になることもあります」と阿部さんが教えてくれた。未利用魚は、量が少ないなど市場に持っていけない魚を漁師さんから買ったり、仕入れたけど食べ方がわからないのでと魚屋さんから引き受けたりすることもあるという。

「手間がかかること」が一番使われない理由だ。30㎝ぐらいの魚なら、包丁も適当なものがありおろすのにも時間はあまりかからないが、未利用になりがちなのは、食べられるようにするまでにとても手間がかかってしまう。魚の一般的な調理法は、刺身や焼き魚などだが、未利用魚の場合、調理法が限られてしまうことがある。頭と内臓をとって素揚げにしたり、骨が多くて食べにくいとか、小さすぎて調理に手間がかかるといった問題を克服した食べ方を考えるそうだ。

また、今では、深海魚や珍しい魚もたくさんとれるため、どのように調理して食べたらいいか勉強中だそう。「危険な毒がある場合もあります。なにかしら理由があって使われていないわけです。加工して、ちょっと手間をかければ食べられるのですが、残念ながら捨てられるのも多いです。」と阿部さんは言う。

大きさや種類だけが問題ではない。「タラは5~8kgくらいあります。頭と内臓をとって身はフライトか焼き魚などにつかわれます。内臓は白子なら使います。あとはほとんど捨ててしまいます。8kgの場合、4kgぐらいが捨てられています。だから、この4kgも未利用魚です。」阿部さんは、半分以上捨てられていることにおどろいた。

小学校で授業を毎年行うようになってから10年ほどになる。20年ぐらい前から、郷土料理の作り方を教えてほしい、話をしてほしいという機会があったそうだ。親子で参加する料理教室では、サケを1本使った料理をテーマにした。半身はみそづけに、4分の1は揚げて南蛮漬けに、あとの4分の1は焼いてご飯をたいて、あらはあら汁にしてすべて使った。今は、切り身を買うのが一般的だが、もし、1本あったらどうする?をテーマにし、こうすれば簡単、こんな使い方もできます、という知恵も伝えたかった。

「地域に住んでいる子どもたちに、昔からどういったものがとれて、どんなもの食べてきたのか知ってほしいです」と話す阿部さん。子どもたちに伝えたい郷土料理の代表は、「おくずかけ」。「おくずかけは家庭ごとに違います。干しシイタケを使ったり、かつおだしだったり、基本的なことはありますが、家庭で手に入るもので作ります。マスを使ったり、鶏肉でだしをとったり、田代島や網地島ではあわびやたこをいれたり。自分の住んでいる場所の近くでとれるものに、野菜や温麵などを入れてくずでとろみをつけます。昔から、みんなが集まった時におくずかけをつくるんですね。無理のないごちそうです。おとうさん、おかあさん、おじいさん、おばあさんからきいてつくる、そういうコミュニケーションを大切にして作って、守っていってほしいです」と阿部さんは話していた。

【取材・文】酒井 朱理(石巻小学校5年生)

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