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曲げて、初めて作品に

お面作品は思ったより重かった。左が橋寛憲さん
お面作品は思ったより重かった。左が橋寛憲さん

橋寛憲さんは針金アーティスト。震災後、石巻立町復興ふれあい 商店街に何度か来てくれた。今回は、石巻日日こども新聞のワークショップに、ゴリラや猫のお面、カエル、鳥などの作品をたくさん もって来てくれた。

橋さんはふちなしメガネをかけている。太い針金を曲げるときに手が痛くならないように、親指と人差し指が完全に隠されていない白い手袋をしていた。「針金がそこにあったから」と橋さんは言う。なぜ針金で作品を?という質問の答えだ。

高校生のとき美術教室に通っていた。教室の図書館に1本長い針金が落ちていて、自転車や椅子を作ってみた。なかなか面白かった。それから暇があると針金を曲げていて、そのまま針金を曲げて作品を作る人になったそうだ。

作品はだいたい1本の針金でつくっている。塊のもの(球体になるもの)は1本で作れる。ただ、植物と昆虫の組み合わせや、からくりのおもちゃなどは、はんだごてや細い針金でつなげている。植物のように枝分かれしていくものは1本では難しいそうだ。大学受験の時に、勉強をあまりにもしないので絵を描かせてもらえないことがあったほど、熱中すると止まらない。子どものころの橋さんは、晴れの日は友達とドッチボールをしたり、走り回ったり、雨の日は家でペン立てを作ったり、絵を描いたりしていたそうだ。

橋さんの作品には、は虫類が多い。うろこや皮のつるっとした感じが作りやすいという。逆に、猫や犬などのふわふわした生き物は作りにくいけれど、だんだん作れるようになってきた。「ハリネズミはいやだなぁ。ウニと栗もいやだなぁ」と、橋さん。それは、一筆書きができないからだ。は虫類の中でも特にカエルの作品が多い。手を伸ばしてエサをつかんでいたり、スパゲッティを食べていたり、擬人化した作品が面白い。制作に使うペンチは30本ぐらい。メインで使うのは10本ぐらい。場所によって太さを変えて使う。中にはピンセット位の太さのものもあってびっくり。一番うれしいのは、作品ができあがった時。でも、次 の日に新しいのができると、「そうでもなかった」と思うこともある。結局、作っていること自体が楽しい。

これから作ってみたいものは、「モロクトカゲ」。 理由は「ヘンだから」。不思議な形の生きものが好きで、植物や菌のように目に見えないものもつくってみたいそうだ。それから「群れ」、これは一筆書きではできない。橋さんの挑戦はこれからも続く。

取材・文:八重樫 蓮(住吉小学校6年生)

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