石巻駅隣りにあるガラス張りの美しい建物「ロマン海遊21」に「石巻観光ボランティア協会」がある。震災で、観光ボランティアの役割が果たせなくなったとき、「自分たちに何ができるのか?」と考え、震災の「語りべ」活動を開始し、石巻を訪れた人たちに好評だ。会長の斎藤敏子さんに話を聞いた。
石巻観光ボランティア協会は、震災前、日和山公園、ハリストス正教会など石巻の観光名所案内を主な活動としてきた。現在、登録しているボランティアは25名で、年齢層は幅広い。活発に活動しているのは、定年を迎えた人たちだ。仕事をもっている若い人は平日活動することが難しい。観光案内だけでなく、5年ほど前から「文化を伝える旅」として、雄勝の法印神楽を紹介したり、追分温泉などを訪れたりする自主的な企画も行ってきた。
しかし、3月11日の東日本大震災で石巻が大きな被害を受けたため、これまでのように景色や建物を案内することができなくなってしまった。斎藤さんたちボランティアは、「自分たちに何ができるのか」と悩んだという。
「震災前、観光案内の場所であった日和山公園には県内外からたくさんの人々が訪れ、花やお菓子を供えてくれました。そこで、公園をきれいにしたいと思い清掃活動をはじめました。訪れた人たちから、震災について聞かれ、市内を案内してほしいと言われました。多くの市民が被災して大変な状況なのに、案内などしてよいのかと迷いました。」考えた結果、東日本大震災を、防災の学びを、自分たちがきちんと伝えようと決めた。ボランティアの中にも被災して大切な人や家をなくした人もいる。
しかし、「震災を体験した自分達だからこそ、伝えることができるし、伝えなければならない」と、斎藤さんは今、「震災の語りべ」になろうと考えている。「語りべ」とは、震災で起きたことを、世の中に伝えていく人のことを指す。最初、斎藤さんは、「案内」や「ガイド」という言葉は、被災したみなさんのことを考えると使いたくないと思っていた。しかし今は、震災のことを伝え、いつかまた美しい石巻を案内する日が来るように語りべとしてがんばりたいと言う。
斎藤さんがボランティアでの観光案内を始めたきっかけは「石巻のよいところを自分自身が知りたい」と思ったからだ。「歴史を知らなければ、まちづくりはできない」と、石巻の歴史について学ぶ公開研修会を毎年1回開いている。これには一般市民も参加することができるそうだ。また、たくさんのボランティア団体との「横のつながり」をより一層深め、イベントでの交流やコミュニケーションをとって協力し、復興に関わって行きたいと言う。
「将来を担うのは今の学生さんたちです。みんなで石巻をつくり上げていくことが大切だから、若い人たちの意見をもっと聞きたいですね。どんな活動をするにも、楽しくなければ続かないし、うまくいきません。そして、これからはもっとボランティア団体同士の交流を活発にし、みんなで協力していくことが大切です」と強調した。
文:佐々木 春香(石巻高校1年生)、写真:千葉 拓人(東松島高校1年生)