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私たちの想いを言葉にたくして 千葉県の中学生からの応援川柳

(左から)千葉大附属中荒川先生、藤澤さん、穂積さん

 昨年の7月、千葉県の中学生が作った応援川柳が新聞に掲載され、石巻市の避難所の中でも話題となった。当時避難所にいた人たちから、「元気がでるのでぜひ、他の作品も見てみたい」という声があがったので、石巻市教育委員会の坂本忠厚先生が、千葉大学教育学部附属中学校(以下附属中学校)国語科の荒川恵美先生にお願いしたところ、8月10日に56点の作品が、避難所となった石巻中央公民館に送られてきた。
★つらいとき 咲かせ ていこう 笑みの花 伊東真一さん
★東北の 皆の希望よ 花となれ 
竹内勇人さん
★今生きる その力こ そ 復興へ 
    引間彩華さん
★東北よ 負けるな絶 対 陽は昇る 
千田慎之介さん
★被災地に 希望の光 よ 降り注げ 
渋谷愛美さん
 実際に応援川柳を作った生徒さんや指導した先生に、その想いを聞いてみたいと思い、取材をした。
 避難所では、送られてきた応援川柳を1階ロビーに掲示。避難者や復興支援で訪れた人、地元住民などが足を止め眺める姿が見られるようになった。当時、避難所には足が不自由で、階段の上り下りも難しい方もいたため、避難所で毎日掲示している日重ねカレンダーに、9月より1日2作品を紹介し、各部屋と廊下など館内に掲示した。荒川先生は「附属中学内に、被災地石巻から送られた避難所だより、カレンダー・地元新聞などを掲示し、生徒の目に触れるようにしたことで、石巻の復興状況の変化や被災地の生活について更に考えるようになった」と話した。10月11日に、石巻市内の避難所がすべて閉鎖される時には、附属中学校生徒74人から避難所に手紙が届いた。手紙は、石巻中央公民館2階に掲示し、既に、仮設住宅や自宅に移った方たちもわざわざ見に来た。応援川柳は、地域でも話題になることが多く、市民の方にも見ていただきたいということで、JR石巻駅にも掲示された。改札口前に掲示され、通勤・通学者の目にふれ、被災者に元気と勇気を与え続けた。
 附属中学校では、10月22日の文化祭から、図書室にも石巻市のコーナーを設置し、生徒や地域住民に被災地の様子を見てもらうようにしたという。
 荒川先生は生徒たちに応援川柳を作らせようと思った理由について「遠くにいる私たちが、被災した方々に、何ができるか考えました。言葉ではげまそうという想いで川柳をつくることを考え、国語の授業の中で取り組みました。生徒たちの川柳をぜひ読んで、被災地に向けての想いを感じて欲しいと思います」と述べた。   
 『支え合い 忘れぬ笑顔が 思いやり」という川柳を作った藤澤佳恵さん(2年生)は、
「被災地の人たちは、辛いことが多いと思いますが、復興のためには笑顔が大切だと考えました。その笑顔をとりもどして欲しいと思い川柳を作りました」と話した。
 避難所の人たちに手紙を書いた理由を聞いたところ「私達の書いた川柳に、思っていた以上に被災地のみなさんが想いを寄せて下さったので、こちらからも感謝の気持ちを表したいと思いました。わたしの手紙が少しでも皆さんの力になれば本当にうれしいです」と明るく答えた。
 「思い出は 津波ごときに 流されない」という川柳を作った穂積謙吾さん(2年生)は、川柳を作った時の気持ちを「テレビを見ていると、被災地では家や車など多くのものが流されていました。街そのものがなくなったところもあるようで、どんなに辛いことだろうと思いました。でも、『心の中にある思い出は流されない』という強い想いです」と語り、「震災から、間もなく1年たち3月のころと比べると、街もだいぶ復興しているようにも見えますが、被災地の状況はきびしいと思います。僕たちも、できることはしたいと思っています」と強く答えてくれた。
 陸上部の副部長で数学が得意な佳恵さんは、松島の景色が大好きだという。千葉のスーパーに石巻産の蒲鉾がなくなったことも心配してくれた。謙吾さんは、野球部で社会の得意なスポーツマン。
 今回初めて県外の人に震災のことを聞いたが、被災地のことをとても心配してくれていることがわかった。同じ中学生で、被災地のことに想いを寄せながら頑張っている仲間がいることは本当にうれしいことと感じるとともに、改めて、千葉大学教育学部附属中学校の皆さんに感謝の気持ちを伝えたい。

竹 愛香(住吉中学校2年生)

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