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市長、教えてください

亀山市長にインタビューする阿部つばさ記者(石巻中学校3年生、右から2人目)と兼子真輝記者(門脇中学校3年生)

 石巻市復興支援ネットワーク(石巻市穀町)が、昨年6月石巻市に提出した「石巻市震災復興基本計画市民からの104の提案」のうち、子どもからの提案であった18項目について、こども記者が亀山紘石巻市長に聞いた。
◆阿部 提案「震災のがれき処理計画を早期に策定し、市民へ開示することを求めます。」ということについて、今どういうところまで進んできていますか?

◆亀山市長 がれきの処理の場合、まず、がれきをどこかに集めなければいけません。今、石巻市内に23カ所の一次仮置き場を設け、がれきを集めています。石巻市のがれきの量は、航空写真からの推定で616万トンと言われています。これは、石巻市の年間ゴミ排出量の106年分です。そのうちの40%が、先ほど言った23カ所の仮置き場に置いてあります。でもあとの60%はこれから、被災家屋の解体作業により排出されます。しかし、一次仮置き場がいっぱいなので、燃やす、分ける、選別といった処理が必要になります。例えば、がれきの中でも、コンクリートは、くだいて埋め立てに、木質がれきは、チップ化して、バイオマスボイラーで電気に変えていくなど再利用を取り入れた処理が必要です。

◆阿部 次に提案の「大人の人たちは震災復興にもっと学生を頼っても良いと思います」についてです。県外から多くのボランティアに来ていただいたのですが、市内・県内の高校生や中学生が貢献できる、一緒に活動する機会があればもっといいと思います。

◆亀山市長 どちらかというと、学生の皆さん自らが「このまちをどうしたいのか」を考え、自主的な行動、提案形の行動をとってもらいたいです。「行政にこうしてほしい」という要望をするのではなく、「自分たちがこんなことをしたい」ということを提案して、行動するのが、私は一番いいと思います。どう思いますか?

◆阿部 そうですね。自主的にやっていくことが大切です。

◆亀山市長 例えば、身近な大人に「どうやったらいいだろうか」と相談して、行動に移していくのもひとつの方法です。「もっと学生を」ということであれば、自分たちから発信して、輪をふやしていくということが必要じゃないかなと思ってます。

◆兼子 はい。では「教育施設、学習の場など、学生の事を配慮した施策を求めます、学習だけではなく、子どもたちが今したいことを考えてほしいです。」ということについてですが、施策はどのくらい進んでいますか?

◆亀山市長 学生に配慮した施策というのは、どんなことを考えていますか?

◆兼子 今ようやく学習塾などが始まってきましたが、まだ足りないと思うのです。学校によって学習の流れる早さも違いますし、もっと学習を進められるような所があればいいと思います。

◆亀山市長 なるほど。夏休みに、横浜市教育委員会から、先生方延べ約1000人が来てくださって、市内小中学校の学生の皆さんにいろんな教育支援をしていただきました。そういう形で、全国から支援をいただいて、学習の機会を作ることが進んでいます。また、「学習だけでなく、子どもたちが今したいことを考えてほしい」ということなんですけども、どうしても発想が受け身です。「何かしてほしい」ではなくて、「こういうまちでありたい」、「自分たちがこうしたい」と、そういう発想をすることが、必要なんじゃないかと思ってます。例えば、「今したいことを考えてほしい」という場合、「今したいこと」ってなんでしょう?

◆阿部 震災から夏ぐらいまではあんまり勉強できる場がありませんでした。私は受験生なので、落ち着いて勉強できる場所がほしいと思っていました。今は、塾にも通い始めて、勉強できる場は前に比べるとあるのですが、私達より被害の大きい学校、仮設校舎で授業を受けている子どもたちからすれば、まだ落ち着けません。他の学校の校庭に校舎が建っていては、どうしても環境に慣れないと思います。学校を元にもどすのは無理だと思うので、心の面でのケアがあればいいのかなと思います。

◆亀山市長 なるほど。多くの学生の皆さんが、大変苦労をして、仮設校舎で授業を受けているという状況ですから、この被災によって満足に教育環境が整ってないということ、我々行政として、早くなんとかしたいと思っています。通学にも時間がかかっていますよね。そういった問題は早く解決しなければいけないと思っています。

◆阿部 以前、大人と話をしたときに、昔は近所付き合いが多かったし、商店街が皆顔見知りだったなどと聞きました。近所付き合いがないという自覚はなかったのですが、確かに、昔に比べると薄いのかなと感じます。この震災をきっかけに、地域同士の安全も含めて、挨拶をかわしたり、近況を話したり、行事やお祭りなど「話せる場」があるといいのかなと思います。

◆亀山市長 それは大きな課題です。地域コミュニティがどんどん少なくなっていって、薄れていって、極端な事を言えば、となりに住んでいる方が誰なのかもわからないというような社会になってきました。石巻にはあらゆるところに神社があり、昔から必ずお祭りをやっていました。そこに子どもたちや大人も集まって、コミュニケーションが取れていました。今、そういう地域で集まる機会というのが非常に少なくなっています。今回の被災を受けて、地域みんなで支援していく、高齢者にもみんなで声がけをして安全な場所に誘導していくとか、そういったコミュニティをしっかり作って行きたいと思っています。

◆兼子 「多くの公園は仮設住宅になっており、子どもの遊ぶ所がない。学習だけではない。子どものことをしっかり考えたまちづくりを行おう」という提案についてです。今、公園に仮設住宅が建っていたりして、道路も危ないので、家で遊ぶことが多くなっています。そうすると、今までのように遊べないので、運動することもできません。

◆亀山市長 そうですね、私も非常に大事だと思っています。まちづくりに必要なことは、子どもが遊べる場所というものをまちの中に作ることだと思っています。その1つとして、北上川に河川堤防を作ろうということになっています。私が子どもの時は、北上川で遊んでいました。ところが今は、川に親しむという感覚はないですよね。むしろ、怖い、危険だという気持ちの方が強いと思うのですが、どうですか?

◆阿部 はい。見た目もちょっと汚いと思います。濁ってたり、特にゴミが浮いてたりとかすると、入りたいとは思わないです。

◆亀山市長 そうですね。せっかくある北上川なので、堤防を作る時に、水辺をうまく使って、大人も子ども川と親しめるような散歩道、遊び場をつくっていきたいなと思っています。それから、石巻の市内には公園がなく緑が少ないですね。公園や、緑のある場所をつくって、そこで子どもたちが楽しめるような、あるいは、スポーツができるような場所を確保していきたいなと考えて、計画を考えているところです。

◆阿部 私たちは今回の震災がいかされなかったら嫌だと思うのですが、今回の震災の経験を、どのように市長はいかしていくとお考えですか?

◆亀山市長 今回の震災を受けて、多くの人が亡くなりましたね。石巻地域だけで、3280名弱の人が亡くなりました。行方不明者がまだ595名います(1月18日現在)。これから、このような大きな災害があっても、人の命だけはしっかりと守っていけるようなまちを創っていかなければいけないと思っています。

◆兼子 今、市長が全国のみなさんに伝えたいことはなんですか?
◆亀山市長 東日本大震災が発生した直後から、ボランティアで全国から多くの方々に支援に入っていただきました。本当に全国の皆さんに感謝と御礼を申し上げたいと思っています。それと同時に、この全国からのみなさん恩に報いるためにも、早く石巻を復興させて、すばらしいまちにしていきたい。それが、今回、みなさんに助けていただいた恩返しじゃないかと思っています。
 映画「エクレールお菓子放浪記」は、石巻もロケ地になって映画化された映画ですけども、「支えあう人の心のやさしさ」がテーマです。「いつも全国のみなさんに感謝をしています」ということが、今だけでなく、ずっと私達が抱いている思いです。

兼子 真輝(門脇中学校3年生)、阿部 つばさ(石巻中学校3年生)

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