明治からの贈りもの
小泉八雲の人生観を今こそ!
未来につなぐオープンマインド

2024/01/11

取材したこども記者

千葉 美琴 

村松 玲里

11月18日、マルホンマキあーとテラス(石巻市)にて、「小泉八雲を読む会~へるんサロン in 石巻~」(主催:みちのく八雲会)の100回目を記念して「地域をつくる 地域を活かす『文化資源』」という講演が行われた。「文化資源」とはなんだろう?講師の小泉 凡さんにお話を聞いた。


小泉 凡さんは民俗学、文化資源学の研究者で、島根県立大学で小泉八雲に関することや妖怪をテーマにした日本文化論などを教えている。10年ほど前に島根県立大学短期大学に「文化資源学」のコースができた。「地域文化」ではなく、あえて「文化資源」という言葉を使って、「文化を活用する」ととらえたところがおもしろいと話す。「地域には文化が積もり積もっていますが、死んで使われないものもあります。そういうものに光を当てることがとても大事なことです。」と小泉さんは言う。机の上での研究より外へ出て実践するのが好きで、集まってくれる人の笑顔が増えていくのが喜びだそう。 小泉さんは小泉 八雲の曾孫だ。祖父の一雄さんが小泉八雲を直接知る最後の人だそう。「好奇心が旺盛で、イマジネーションを何より大切にし、家族の幸せを一番に考える人だったと聞いています。」日本の教育は記憶力優先で、イマジネーションが育たないからと、小学3年生まで子どもたちはホームスクールだった。多忙な日々だったが、1日5時間程子どもたちの教育に費やした。イマジネーションを豊かにするために、アンデルセンを読ませたりしていた。

小泉 凡さん(右)。後ろのスクリーンに映し出されているのが曽祖父の小泉 八雲。

八雲は多くの怪談を執筆した。2歳から13歳ごろまで過ごしたアイルランドでの体験が影響しているだろうと小泉さんは話す。「アイルランドのケルト民族は、目に見えないものを大切にする人たちでした。文字をもっていませんでしたから、いろいろな話を語り継いでいました。八雲の乳母キャサリン・コステロも、幼少の八雲にたくさんの妖精や怪談などの話を聞かせたそうです。」キャサリンの出身地アイルランド西海岸では、今でも日常に妖精の話が残っていて、「妖精の通り道」という道路標示もあるそうだ。 八雲が書いた「稲むらの火」の英語の題名は「A Living God(生き神様)」だ。「八雲がこの本で伝えたかったことは、主人公が津波から多くの人を救ったと言うことだけではありませんでした」と小泉さんは説明する。日本の文化では、生きている人でも、感謝されれば崇敬の対象(神)になりうる、キリスト教の「神」とは全く違う考えがあるということを、西欧の人たちに理解してほしいという強い思いがあったという。小泉さんは、八雲の生き方からはオープンマインドと五感を研ぎ澄ませることの大切さを教えられ、その姿勢がますます現代社会に必要になると考えている。 今回は、「小泉 八雲を読む会~へるんサロン in 石巻~」(みちのく八雲会主催)の100回目の会で講演するために石巻に来た。これまで石巻には何度か来る機会があり大好きだそう。石巻には多くの文化資源があると小泉さんは言う。牡鹿半島などの多くの自然に恵まれていること、石ノ森萬画館に代表される漫画の世界、東日本大震災の被災地として、門脇小学校、大川小学校などの震災遺構があること、伝承ロードなど東北全体で3.11を伝えていく取り組みも文化資源のひとつだと話す。「『石巻学』という本が発行されていますが、石巻に関わる多様な人々へのインタビューや、詩人の吉増剛造さんのアーティストインレジデンスのことなど、いわゆる郷土の雑誌とは異なり、世界から見た石巻の視点で発行されていて興味深いと思います」と小泉さん。 主催者の門間 光紀さん(みちのく八雲会代表)は、「怪談だけではない八雲の多才さや明治の日本を世界に住民目線で紹介した功績、日本人の女性と結婚して帰化したほどの日本好き、そんな八雲を等身大で知り関心を持ちそしてファンになってもらえる人を緩やかに増やしたいと思っています」と話していた。

講演チラシは出雲神楽をイメージした帯の柄。出雲流神楽は島根付近で行われており、芸能の要素が強く衣装も華やかだ。

  ★「小泉八雲を読む会~へるんサロン in 石巻~」に参加したい方は下記にご連絡ください。 みちのく八雲会 門間 光紀さん 電話:090-7526-7826 e-mail:genkimiyagi@yahoo.co.jp

【取材・文】千葉 美琴(蛇田中学校2年生)、村松 玲里(蛇田中学校3年生)

こども記者:,

ページのトップへ戻る