大川小は未来を拓く
悲劇で終わらせないために
防災はハッピーエンドのためにある

2024/02/11

取材したこども記者

阿部 壮汰

2024年1月6日(土)・7日(日)、第13回石巻日日新聞社杯・第9回明治大学付属明治高等学校プレミアカップが女川町総合運動公園第二多目的運動場で行われ、明治高校の生徒35名がボランティア活動を行った。翌8日(月)、一行は石巻市震災遺構大川小学校を訪れ、語り部の佐藤 敏郎さんの話を聞いた。東日本大震災の復興支援活動として2012年度から始まったこの活動は今回で終了となった。


左から;石黒さん、佐藤さん、阿部記者、岡さん、小野さん

明治大学付属明治高等学校は2012年に創立100周年を迎え、地域に還元できる記念事業を考えていた。明治大学出身の須田善明女川町長から、東日本大震災後、運動場には仮設住宅が立ち並び、子どもたちが遊べる場所が限られているという話を聞き、石巻日日新聞社杯という石巻地域の小学生向けのサッカー大会を合同で開催することになった。

サッカー部顧問の石黒 祥樹さんは「最初の年のことが一番心に残っています。震災から2年弱しかたってなかったので、地元のみなさんに受け入れてもらえるかどうかなど不安がありました。当時まだ女川町第2多目的運動場は土のグラウンドでした。気温が低く、2日目は大雪に見舞われ、ぬかるんだグラウンドに足を取られて、思うようにボールをけれないこともありましたが、子どもたちは不満をもらすこともなく、明るく前向きにサッカーに取り組んでくれました」と当時を思い出す。子どもたちのパワーに元気をもらったと感じている。

今回で最後になった。「続けてこれたことにはみなさんへの感謝しかありません。参加した生徒たちには、今回聞いた話を自分のこととしてとらえ、今後に活かしてほしいです。身近な人に伝えていくことがまずできることだと思います」と石黒さんは言う。

語り部の佐藤 敏郎さんは東日本大震災で次女を亡くした。「逃げる場所としての山やハザードマップがあるだけでは助かりません。(山に逃げる、ハザードマップを活用するといった)行動が命を救うのです。今回、みなさんが、このことを持ち帰って多くの人に伝えてくれることを願います」と話していた。

旧校舎前で佐藤さんのお話を聞く

裏山に登ってみる参加者たち

校庭に残された「未来を拓く」の文字

小野 友哉さん(サッカー部、明治高校3年生)

参加者たちは、大会の審判など運営だけでなく、子どもたちと家族や復興住宅のみなさんともちつきなどをして交流するボランティア活動も行いました。子どもたちが楽しむことが目的なので、どうやったら楽しんでもらえるかを工夫しました。事前学習で大川小学校のことを聞き、悲劇だ、かわいそうだと思っていましたが、佐藤さんのお話を聞いて、大川小を「未来を拓く」場所にしなければならないと思いました。東日本大震災の記憶が少しありますが、ぜひ記憶がない世代に伝えなければいけないと思います。経験を悲劇で終わらせず、防災は恐怖ではなく希望であることを、記憶がない世代に伝えていきたいと思います。

岡 渉さん(明治高校3年生)

一般生徒の枠で来ました。今年は元旦に石川で地震がありましたが、災害はいつ起こるかわかりません。教科書で学んだだけではだめで、避難訓練に参加する姿勢やひとりひとりの防災意識が変わることが重要だと思いました。佐藤さんの「防災はハッピーエンドであるべきだ」というお話が印象に残り、ハッピーエンドにするためには、自分の防災意識をどう高めればよいのかを考える機会になりました。つらい体験は語りたくない人もいます。今回、佐藤さんが語ってくれたことは貴重なことでしたし、聞けたことも貴重でした。今回聞いて学んだことを持ち帰ってたくさんの人に伝えたいと思います。

【取材・文】阿部 壮汰(渡波小学校5年生)

こども記者:

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