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石巻焼きそばでみなさんに恩返し 移動販売車で走る尾形勝寿さん

移動販売車で走る尾形勝寿さん

 石巻焼きそばの移動販売を行っている尾形さん。移動販売を始めたのは東日本大震災後だ。どんな想いがあったのだろうか。
 震災が発生したときは、中華料理店「味平」の営業時間中だった。「味平」は、震災前、尾形さんと奥さんが二人で営んでいたお店。地震発生時も仕事をしていて、大津波警報の音が鳴りひびいた時は驚いた。「津波がくるとは思わなかったから、何をすればいいのか分からなかったですよ」と尾形さんは言う。
 奥さんとともに必死で日和山に避難しようとした。あと少しのところでふりむくと、そこには奥さんの姿がなかった。それでも山にはい上がり、尾形さんはなんとか助かった。それから、たった1人で過ごす夜、尾形さんは、自分だけ生きていてもいいのだろうか、自分も一緒に死んでしまえばよかったと、考えていたそうだ。
 1週間後、尾形さんは、被災した店のがれきを片付けに行った。そこで、奥さんが使っていた2本の「ヘラ」を見つけた。ヘラは焼きそばを作るのにかかせない道具だ。尾形さんは、奥さんが応援してくれていると感じた。「『なにへこたれてんだ!』って、妻に言われているような気がしたんです。『ヘラを使って焼きそばを作りなさい』と励まされたと感じました」。
 尾形さんはそのヘラで石巻焼きそばを作りはじめた。車を買って移動販売も始めた。「みんなに元気になってほしい」。そんな願いをこめてがんばる尾形さんを、たくさんの人が応援してくれた。尾形さんは「今度は、石巻焼きそばでみなさんに恩返しをしたいと思っています」と言う。石巻焼きそばが、応援してくれた人と石巻をつなぐ絆になる、そのためにがんばる、それは、今は亡き妻への想いでもあるのだ。

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