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松島水族館のこれから 88年間のあしあと

デンキウナギと西條さん

 松島水族館は、昭和2年に開館した日本で2番目に古い水族館。東日本大震災で大きな被害を受け、2015年5月10日に閉館した。館長の西條正義さんにお話を聞いた。
 「水族館をやっていてよかった」。東日本大震災発生直後の2011年4月23日、松島水族館は再オープンした。震災後の状況では、水族館のオープンは優先順位が低いのではと心配していた西條さんは、みんなの笑顔を見てそう思った。
 3月11日。津波で水槽ポンプの多くが壊れ、加温や水質維持ができなくなってしまった。「寒さに弱いコマッコウクジラを助けることができませんでした。津波の直撃で体が汚れたビーバーは、低体温症で6頭のうち3頭が死んでしまいました」。それでも、水質や寒さに強いペンギンやイロワケイルカなどは大丈夫だった。「松島水族館の歴史の中で、決して忘れることはできません」と西條さんは言う。
 昭和59年、日本で3番目にラッコが仲間入りした。年間来館者数は、それまでの30万人から一気に80万人に増えた。ラッコは、あおむけになってのんびり浮いているところや、道具を器用に使っているところがとてもかわいらしいそうだ。「人間の仕草に似ているから親しみやすいのかな」と西條さん。
 ところで、西條さんのお気に入りは、なんと「デンキウナギ」。大学では工学部電気科で学んだので、電気が大得意。オリジナルの装置を作って展示、デンキウナギのコーナーでは感電体験もできた。
 今年、7月1日に開業予定の仙台うみの杜水族館の飼育業務を任せられることになった。「新しい水族館には松島水族館の生き物をみんな連れて行きます。35人の飼育職員も全員移ります。アシカショーのほかに、新たにバンドウイルカのショーも始まりますよ」。練習は1年以上前から始まり、準備は着々と進んでいる。東北最大級となる新しい水族館には、三陸の海を再現した大水槽もあるという。
 震災を乗り越えた生き物たちが、新しい水族館で楽しく泳ぐ姿を見るのが今から楽しみだ。

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