
匠の技・大須のとろろ昆布づくり|みなさんは、とろろ昆布の作り方を知っていますか?
阿部傳吾さんは昭和23年生まれの68才。とろろ昆布をつくる仕事をしている。「とろろ昆布づくりは簡単なように見えるかもしれないけれど、結構難しいんですよ」。昆布を削ることを「引く」という。阿部さんは昆布を引く時が楽しい。「心が澄んでいるとよいのができます」。阿部さんは自分で引いた昆布が大好きだ。
阿部さんは、10月~11月ごろに1年分の昆布をまとめて仕入れる。昆布は大須の海でとれる。大須の昆布は塩味、とろみ、甘みのバランスがよいのでおいしいと評価が高い。磯場から少し下がったところの浅いところから水深7~8㍍のところでとる。石についている昆布でないとだめ。ロープについているこんぶは天然でも味がよくないそうだ。「ねじり棒」で昆布をねじって引っこ抜いたり、かまで根っこを切ったりしてとる。漂着してくる昆布もある。とれる量は腕次第。多い人だと2~3時間で100㌔もとる。
昆布はとったあと、柔らかくして切り、ゴミを取り除き、機械でたたいて一晩寝かし、つつに詰める。この昆布のかたまりの重さは約120㌔、製品にすると100㌔分ぐらいになる。日当たりのよいところで育った昆布のほうがおいしい、日かげの昆布は身が薄い、と阿部さんは言う。
東日本大震災の時、高台に住んでいた阿部さんは無事だった。しばらく避難していたが、電気が復旧すると仕事はすぐに再開できた。「仕入れた昆布は全部倉庫に入っていたから大丈夫でした」。でも、心配なことがある。「温暖化のせいか津波のせいかわからないけれど、昆布の収穫量が減っているような気がします」。温暖化の影響で昆布の味が変わるんじゃないか、昆布が取れなくなるんじゃないかと気がかりだ。「でも、体力が続くうちは、できる限り引き続けたいですね。80才ぐらいまではね」。
こんぶのおいしい食べ方は?おにぎりに巻いたり、おつゆに入れるのも阿部さんのおすすめだ。「めんつゆにお湯を入れて、こしょうをちょっとふってね。最後に昆布をいれるんですよ」。昆布は根元の部分がおいしいそうだ。お彼岸の頃に取れる昆布が一番おいしい。低カロリーでカルシウムが豊富!食物繊維もたっぷりの健康食、大須の自慢!とろろ昆布をぜひ食べてください!
【取材・文・イラスト】大須小学校|阿部太遥(2年生)・阿部佑成(4年生)・永沼ちはる(4年生)・永沼海生(5年生)・永沼未帆(6年生)