「よーい、はじめ!」この声で、生徒たちの表情が一変した。パチパチパチ…教室に響くのは、そろばんの音だけだ。ここは、私も幼いころから通っている「はやしそろばん総合学園」。幼稚園の年長児から、大学生まで、幅広い年齢の生徒たちがいる。はやし総合学園副学園長の林順一郎さんに取材した。
林順一郎さんが先生をはじめてから今年で20年。そろばん塾は、もともと地元の豆腐店だった順一郎さんの父、大治郎さんが設立した。「はやしそろばん」ができたのは、45年前のことだ。
東日本大震災の被害はとても深刻だった。「17ヶ所の教室が流されたり、倒壊したりしました。2ヶ月間、がれき処理と片付けをしなければならず、このまま続けていけるか不安になりました。でも、残っている教室だけでも再開するのが今の自分たちの役目、と決断した途端、やらなければいけないと強く思いました」。順一郎さんの熱意が伝わってきた。
「今年は3名が暗算で日本一になりました」。指導者として、自分がもっていることを精一杯教えれば、子どもたちは目標をもって一生懸命やってくれる、と言う。「これからも志をもって子どもたちに接していけるようにしたいです。大人になっても続けて、指導者になってくれる子どもたちもいてうれしいです」。何事も続けることに意味があると林さんは言う。
小学2年生の横部碧希さんは、いくつもの交通手段を使って、週1回、仙台から通っている。そろばんは楽しい?と聞くと大きくうなずいた。「計算の種類では掛け算と割り算が好きです。難しくてよく間違っちゃうけど、難しいから好きです」と答えてくれた。何事も続けることに意味がある。続けることで人は成長していくものだ。